絵画を買ったよ、って話 「獅子の騎士」

　人の価値ってそれぞれで、なんてことのない絵に、数億円出せる人もいれば、落書きだと一蹴する人もいる。それでも、国産のお肉がいいと高い肉買う人もいるし、ブラジル産でいいと鶏もも肉を買う人もいる。動けばいいと中古車に乗る人もいれば、無理して高級車に乗る人もいる。それが顕著に現れるのが趣味であって、中でも芸術系の趣味だと思うんです。

　自分は幼い頃からFFシリーズが好きで、初めてやったゲームはFFⅧでしたし、ナンバリングや派生作品を買うために機種を購入して育ってきました。だから、勿論植松伸夫さんの音楽は好きですし、天野喜孝さんの絵も大好物な訳です。野村さんが作ると言ったら、八年間待てましたしね。待った結果は、置いといて、ですよ。

　天野さんを知ったのは、小学生でした。一番好きだったⅧには、野村さんの絵が多く採用され、自分で調べないとロゴデザイン程度しか天野さんの絵には触れることが出来ませんでした。出会いは、Ⅹが出た頃だったと思います。2001年あたり、まだ六歳とかだった頃ですね。そこで、六歳の自分は、Ⅹのロゴデザインが、Ⅷのデザインと似てるなと気づいた訳です。それが、漠然とした天野絵との出会いでした。

　月日は経ち、沼津市で、天野絵の展示会が開かれると知り、少年くろまは父親にせがみ、連れて行ってもらったことを覚えています。そこで、初めて芸術として価値のある絵を生で見たんです。恐らく、今までも価値のある絵は見ていたのでしょうが、先程述べたように、芸術性などわからない自分は、理解出来ないんでしょうね…。

　その時に、見た絵は多くあったんだと思いますが、覚えているのは二枚。一枚は、FFⅩのティーダとユウナが抱き合っている絵「水夢」、もう一枚は、FFⅧのスコールがガンブレードを構えている「獅子の騎士」です。その時の感動を覚えています。あれだよあれ！と、アルティマニアとかで見たことあるあれだよ！と。そのまま値段を見て、桁を一つ読み間違えて意外と安いねと言ったことまで覚えています(笑)画像も載せたいのですが、恐らく公式からは出ていないので、控えさせていただきます。

　その時に、一枚は欲しいなとやんわりと思ってしまったんですね、それがずっとしこりになるとは気付かずに。

時は流れに流れ、FF愛をこじらせたまま、約二十年が経ちました。

ある日、近くに天野喜孝の絵画展があるからいかないかと、FF好きの友人に誘われました。暇だし、行ってみるかと行ってしまって、（金銭的な）運命が変わることになります。絵画展につき、FFⅨの新作「パーティー」をニヤニヤ眺めていると、「どうですか？」との声が掛りました。金銭的な余裕なんてあるわけなく、ましてや、購入だなんて一ミリも考えてなかった自分は‥…断らないと断れなくなることがわかっていたのに、気づいたら照明を当てられた「パーティー」を鑑賞していました。

この絵がまた、素晴らしくてⅨキャラが森の中で佇んでいるところに、木漏れ日が当たっているというなんとも、最高で至高な絵だったんですよ！！

ただ、絶対に買えない。と思っていたので、断りながら席を立とうとしたら…

「これなんかどうでしょう」と言って近付いてくる社員さんの持つタブレットには、「獅子の騎士」が写っていたんです。買わない、という意思がぐらんぐらんと揺れ始めたんですね。この絵を出されちゃ話が違うと。

何を隠そう、接客してくれていた方に先程のエピソードをぜーーんぶ話していたんですね。おしゃべりが過ぎるよね、本当に。

タブレットを抱えた社員さんは、かなりのお偉い方らしく…十○万冒険していただきまして…実物も展示されていないのにも関わらず、気づけば売約書にサインをし、クレジットカードも渡し、ボーナス2回払という謎の払い方をし…

ふおおおおおお！かっこいいんですけど！！

綺麗すぎるんですけど！！！美しすぎるんですけど！！！QOL高まるううう！！！

事が事なので、数人の友人にしか話していなかったのですが、もう、おしゃべりが我慢出来そうもないので、ここで発散しました。

二十年ってすごいんですね。なんとなく思ったことが、大きな決断を促すほどの大きな思いに変わってるなんて。今、教えてる子供たちにも、何かしこりになる言葉を掛けられているだろうか、とも考えてしまいます。

なんのいたずらか、この絵が出てしまったことが終わりでした。価値は人それぞれで、難しいよねと感じる日々です。この絵を買ってからは、他人のお金の使い方には口を出してはいけないなと肝に命じています。

ちょっと前に、絵を買っちゃったよ、って話でした。

#天野喜孝　#FINALFANTASY